危機に立つ我が国と道徳教育

                                  郷友総合研究所教育研究会


          まえがき  真の道徳教育の復活を求める

はじめに

 文部省は昭和三十三年に、「道徳」を教育課程として定め、平成十年末には「生きる力」の育成として道徳教育の充実を図った。
しかし確固とした徳目を示さず、道徳の教科書もつくらず、道徳的自覚、道徳的実践、道徳性を培うなど内容のない道徳教育が六十年続いている。
道徳教育を学習した子供達が社会の中枢的な存在となると、青少年の倫理観・規範意識は希薄化し、反社会的反道徳的行動が多発し、大人の社会も企業組織の不祥事、不正談合、官僚の腐敗、凶悪犯の横行、学校にクレームをつける親等々、親の教育(親学)までが必要とされる状況である。
明らかにこの間の道徳教育が教育効果を上げていない。

 安倍内閣は、一昨年末、教育の再生を掲げて教育基本法を60年ぶりに改正し、第二条で「道徳心を培う」ことを挙げ、明確に道徳教育の刷新を、教育再生の目標に掲げた。

 しかし文部科学省は、今年3月、道徳の教科化を見送り、道徳の教科書は作らない、道徳教育の評価はしない、現行の教育課程の儘、一層の充実を図っていくとして、道徳の内容、徳目に触れない小・中学校学習指導要領の全面改正を告示した。


道徳教育の内容について

 道徳は、国の礎を築くものである。
世界の国々は、それぞれ固有の伝統の中から自らの道徳をつくりあげてきた。
ヨーロッパでは、宗教による影響が強く、アジア特に中国・韓国では儒教の教えが生きている。
我が国も我が国固有の道徳がある。我が国は、古来、儒教の影響を受けつつ、独自の武士道を生み出し、国民道徳をつくりあげた。
明治の始め日本に来た外国人が、日本のどこに行っても、そこに住む人々の道徳心の高さに目を見張ったことを書き残している。

 今日、道徳教育を再生するには戦前の修身教育を範とすべきである。
人の守るべき五つの道・五輪(君臣の義・父子の親・夫婦の別・長幼の序・朋友の信)、人が常に守るべき徳・五常(仁・義・礼・智・信)の道徳である。
五輪五常の道徳を身につけてこそ、家が斉い、国が治まり、天下が太平になる(修身・斉家・治国・平天下)ということは中国の四書の大学で教えている。
また国家の危機に当たり「見義不為 無勇也」(義をみてせざるは勇無きなり)は論語に出てくる教えである。
以下道徳の徳目「仁」、「孝」、「義」、「礼」、「廉恥」、「克己」について提案する。