郷 友 俳 壇


 令和2年9・10月号より
 寺男 手甲きりりと 草を引く 佐賀  一ノ瀬恵昭
 緑蔭や 確と扉を鎖す 太子堂
 一湾に 朝の虹立つ 桜島 小林  高木智念
 青笹や 鮎の背越しの 透きとほる
 明易や 楽しき旅と なる予感 船橋  天本宏太郎
 心まで 染み入るごとく 若葉映ゆ
 校庭に 声の弾みて 朴咲けり  目黒  並木桂子
 時の日の 女教師の 声溌溂と
 大切に 納めて黴に 見つけられ 習志野  江口景舟
 夏草や 二日遅れの 筋肉痛
 泣き地蔵 秘める御堂の 涼しかり 相模原   天野たけし
 寺畑の はつかな畝の 茄子の苗
 新茶汲む妻の遺愛の伊万里焼 館山   斎藤一向
 梅雨の灯や 古代を偲び 繰る風土記
 星の竹 子等の願ひに 撓みをり 相模原   折口桂子
 オルガンの 何処か懐かし 星祭
 青嶺なす 穂高槍岳 剱岳 浜松   宮本立男
 残雪の 穂高嶺祓ふ 山開
 多知夜麻は 神の山とや 雲の峰 入間   藤井功風
 虎尾早や 立山開山 御廟なる
 風立ちて 濡れ色こぼす 濃紫陽花 小牧   松岡魚青
 桑の実の 熟るる匂ひや 俄雨
 句心を 濡らし紫陽花 慈しむ 今治  畴谷白涛
 豪雨にも 耐へ抜く試練 額の花
 鉢巻の 捻り凛々しき 祭衆 四街道  生嶋千代女
 遊覧船 佃大橋 潜りゆく
 夏料理 父祖の愛せし 地酒酌む 新座  船田藤三郎
 梅雨明や 木々も小鳥も 晴々と
 五月晴 雲燦然と 富士聳ゆ 杉並   江川大二郎
 湯疲れを 麦茶に癒す 至福かな
 七福神の 参道に揺れ 濃紫陽花 埼玉   川村和栄
 人々の 避難の続き 梅雨深し
 夏至の雨 ひとり寛ぐ テイタイム 埼玉  岡崎布喜子
 通学路 旗振る人の 夏帽子
 早朝の アスリート増ゆ 青田道 町田  永野節雄
 草払ふ 農の忙しき 梅雨晴間
 夕風に 露転びゐる 蓮浮葉 選者   有馬澄廣

  令和2年7・8月号より
  汐入の 川を眼下に 藤揺るる 館山  斎藤一向
  ふるさとの 手摘み手揉みの 新茶かな
  熔岩掴み 楚々と自生の 朝ざくら 小林  高木智念
  春夕焼 襞あらあらし 桜島
  茅葺の 小屋の閉さるる 花菜畑 佐賀  一ノ瀬恵昭
  晴れ渡る 苑に落花の しきりなる
  相愛の 筑波二峰の 朧月 浜松  宮本立男
  朧夜の 筑波貫く 恋瀬川
  花吹雪 一期一会の 茶会かな 船橋   天本宏太郎
  春眠や 夢の架橋 渡り行く
  金木犀の 香りに齢 重ねをり 習志野  江口景舟
  狭庭にも 日和を待てる 花水木
  介護士と 杖曳き憩ふ 花の昼 目黒  並木桂子
  麒麟麦酒 本社跡てふ 花の山
  外灯に 桜の泛ぶ 闇深し 相模原  天野たけし
  砂防林に 声やはやはと 鴉の子
  水車小屋 久に閉ざされ 竹落葉 相模原  折口桂子
  厨へと 運ぶ筍 土零す
  交番に 泥継ぎ足せる 燕の巣 小牧  松岡魚青
  顔の泥 拭ひて畦を 塗り込める
  茶摘機の 音清晨の 彼方より 入間   藤井功風
  輪郭を 赤らめ遠の 樫若葉
  仁王像 眼光和む 花吹雪 今治  畴谷白涛
  コロナ禍に 人影のなく 春嵐
  音たてて 岩削り落つ 雪解滝 四街道  生嶋千代女
  重さうに 垂れ八重桜 地に触るる
  うららかや 和顔に座す お釈迦様 新座  船田藤三郎
  しらじらと 揺るる五弁の 梨の花
  庭の卓 囲み牡丹の 咲き継げる 埼玉  岡崎布喜子
  山寺の 結界しるき 竹の秋
  春泥を 浴びし子母に 縋りをり 埼玉  川村和栄
  上野山 時疫に自粛 花冷ゆる
  崖に日を 浴びほのと 朝桜 町田  永野節雄
  鯉の波紋 広がる河岸に 花菜揺れ
 すみれ草 見守り笑める 羅漢像 杉並   江川大二郎
  尾を残し 石に隠れし 青蜥蜴
  夕風に 花菜揺れ継ぐ 堤かな 選者   有馬澄廣