令和六年 年頭の辞
 
                         日本郷友連盟 会長 森 勉

 明けましておめでとうございます。
謹んで栄えある令和6年の新春のお慶びを申し上げます。 
 畏くも天皇皇后陛下におかせられましては、昨年コロナ禍にもかかわらず即位以降初めてのインドネシア公式訪問を始め国の内外においてご活動あそばされ誠に嬉しく喜ばしい限りであります。
昨年十二月には上皇陛下は目出度く卒寿をお迎えあそばされました。
心から慶賀申し上げますとともに、本年の皇室ご一家の益々のご繁栄称栄を祈念申し上げます。
 また、わが国の平和と安寧のため国内はもとより遠く海外の地においても日夜厳しい訓練・勤務に精励されている自衛官の皆様のご苦労ご精進に対し深甚なる敬意と心からの感謝を申しあげます。

 昨年の国際情勢については、一昨年生起した国連の常任理事国であり核大国であるロシアによる隣国ウクライナへの侵略は、両軍の多大な損害に加えて現在確認されているだけでも一万人とも言われるウクライナの民間人が犠牲になっている悲惨な戦争が一年十ヶ月も継続しています。

 また、イスラエル建国以降幾度も繰り返されてきたイスラエルとパレスチナの出口の見えない紛争は、昨年十月ハマスによる「アルアクサの洪水」と呼称される大規模かつ非人道的な奇襲テロ攻撃に対しイスラエルが自衛権を発動しガザ地区等への空爆、海上からの砲撃、地上軍の反攻等により状況は凄惨なものとなっています。
加えて、アフリカ、中東、アジア、中米等において領土、宗教、民族、資源等に起因する戦争・テロ等が頻発しています。
 一方、人類史上何度も人口を半減するほどの猛威を振るった天然痘・ペスト・コレラ等と同様のコロナウイルスによるパンデミックは四年間も継続しており、コロナウィルスの五類感染症移行にもかかわらず未だ日常の活動に大きなそして暗い影を落としています。
国際社会は、ここ数年不幸にして「戦争」と「パンデミック」という人類にとって二つしかいない天敵に同時に対処するという困難な状況に直面する中、冷戦終結以降継続してきた閉塞状況から激動の時代へと変化する兆しを見せており、欧米を中心とした民主主義国家群と中華人民共和国やロシアやグロバールサウスと言われる開発途上国等を含む権威主義国家群との対立と競争という新たな国際秩序が形成されようとしています。

 わが国周辺においては、核兵器を保有する専制独裁国家の中華人民共和国、北朝鮮、ロシアと一衣帯水で国境を接しています。
三期目の習近平率いる中華人民共和国は、国内においては経済および政治体制が必ずしも順調でないにも関わらず偉大な中華文明の復活を掲げ国外においては米国との競争・対立を深め、わが国周辺海空域においても活動を活発化しています。
特に歴史的にも国際法上も明らかにわが国固有の領土である尖閣諸島周辺において海警船の遊弋・領海侵犯等は年々エスカレートし看過できないものとなっています。
また、福島の原子炉処理水の海洋放水にあたっての科学的根拠に基づかない言われなき誹謗・中傷・妨害、水産物の輸入禁止措置等は責任ある大国として、またわが国の隣国として越えてはならない一線を超えているように思われます。

 金王朝とも言うべき北朝鮮は、ミサイル発射回数を飛躍的に増大し、核実験の再開も示唆され、武器弾薬支援等によりロシアとの関係を親密化しており、その動向は予測不能であり注意深く見守る必要があります。

 二十年近く政権を保持しているプーチンのロシアは、核の使用を仄めかし、欧米諸国と対立し、日ロ平和条約締結の交渉を停止し、我国固有の領土である北方四島の軍備を強化し、わが国周辺における軍事活動を活発化する等予断を許さないものがあり、わが国は建国以降最も厳しい安全保障環境に晒されています。
特に、ウクライナ戦争におけるロシア軍は戦争法規を無視し勝者のみが正義と言わんがばかりに民間人を略奪・虐殺・拷問し、学校・病院・発電所等の重要社会施設を破壊し、戦場においては受刑者を前線に送り離脱する者は後方から射殺するという残忍な行為を見せつけ、情報戦、宇宙・サイバー・電磁波領域を含むハイブリッド戦が遂行できるハイテク装備を保有していながら第一次世界戦争の時の塹壕戦のような損耗戦を繰り返しています。
常識では理解し難い極めて異様で怪物のような国家が現代にそしてわが国の隣国として存在することに驚愕しています。

 かかる状況を考慮すれば、わが国独自の防衛力の強化と日米同盟のさらなる深化は喫緊の課題であることに疑いの余地はありません。
令和四年末のいわゆる安全保障関連三文書の改定、これに基づく岸田政権による防衛費をGDPの二%に倍増し防衛力を急速に増強することの表明は遅きに失した感はありますが国力を総動員して迅速に実行することが急務であり、本年度予算の編成に大きな期待を寄せています。忘れてはならないことは、ロシアの侵略に対し、たとえ相手が大国であっても、如何なる犠牲を払っても、自国は断固として自らの手で守り抜くというウクライナ国民の強い決意の表明と実践です。
世界の多くの国々はこれに感動し励まされたとえ自国が困難な状況下であってもウクライナの支援を継続していきます。

 現在の日米同盟では、自衛隊は防御、米軍は攻撃すなわち盾と矛の機能的役割分担であるため相互不可分の関係であり、加えて先人たちの献身的な努力の結果、自衛隊と米軍の信頼関係は極めて強いものとなっています。
今後は自衛隊も規模は小さくても欠落のない総合的な戦力として整備し日米同盟を機能的役割分担からより政治的選択肢の幅を広げることが出来る量的役割分担に変更するべきであると思います。
これにより専守防衛や非核三原則等の国防の基本政策について検討が可能となります。

 連盟の主要な活動である英霊の慰霊顕彰について特に靖国神社への参拝は、憲法が定める信教の自由から政府が関与することが制限されるという微妙な問題や近隣諸国の歴史問題等に起因する感情的な反発もあり、総理の靖国神社への参拝は平成二十五年当時の安倍首相が参拝されて以来菅前首相も岸田総理も真榊料は奉納されているものの直接参拝はされていません。
総理の靖国神社参拝の再開ひいては昭和五十年以降四十八年間途絶えたままになっております天皇陛下のご親拝が実現するよう期待して止みません。

 連盟は創設以来自主憲法の制定を訴え続けて参りました。
誇りある日本を取り戻すためには七十六年前、敗戦によりわが国に主権が存在しない時期、占領軍に押しつけられその後時代が急速に変化したにも関わらず護憲の名のもと一言一句改正されなかった傀儡とも言うべき現行憲法を廃棄し日本人自らの手による日本の歴史、伝統、文化に基づいた日本国憲法を制定することこそがその第一歩であると確信しています。

 戦後は終わった、昭和は遠くなった等と言われますが、世界にある二百近い国々で、国民が自らの手で憲法を制定することなく占領軍に押しつけられた憲法を金科玉条のごとく崇拝し、占領軍によって否定された世界で最も長く続いている国の歴史や国の成り立ちに殆ど関心を示さない根無し草のような国家が存在するでしょうか。
敗戦により国家としての尊厳、民族としての誇りを失った世界で最後の植民地とも言うべき屈辱的な状態から一刻も早く解放されなければなりません。

 本年は国内外ともに厳しく激動の年になることが予測されます。
日本郷友連盟を取り巻く環境もさらに厳しくなるものと推察しますが誇りを持って着実に進んでいきたいと願っています。本年も何卒宜しくお願い致します。



                     
            令和五年度 総会 式辞
 
                         日本郷友連盟 会長 森 勉

 本日ここに内外多数のご来賓のご臨席を賜るとともに全国から志を同じくする多くの会員各位のご参集を得て、令和五年度一般社団法人日本郷友連盟総会を開催出来ます事は誠に喜ばしく、関係者の皆様に心から厚く御礼を申し上げます。

 日本郷友連盟は旧兵役に服した方々が昭和三十年祖国再建と国土防衛を目的とする日本戦友団体連合会として産声を上げ翌年日本郷友連盟として改称して以来約七十年間にわたってわが国の保守本流の脊柱として活動し大きな影響力を行使してまいりました。
今後は、英霊の慰霊顕彰、自主憲法の制定、北方領土の返還、自衛隊の国軍化等、過去の負の遺産に真摯に向き合うとともに、国内にあっては大東亜戦争の敗戦で失った日本の良き伝統を再生させ、国際的には国連改革、東アジアの厳しい戦略環境の克服、日米同盟の更なる深化等未来に向かって発展性ある問題に挑戦しなければなりません。

 さて、コロナウイルスによるパンデミック事態は未だ終息はしないものの概ね低レベルで推移しており各種社会活動も従前に服しつつありますが依然として十分な警戒が必要だと思われます。また、ウクライナ戦争は昨年二月二十四日勃発以来一年二ヶ月以上が経過しましたが依然として終結する兆しはありません。ウクライナ・ロシア両軍は双方多大な損害を出すとともに非人道的なロシア軍の攻撃によりウクライナ国民や貴重なウクライナの学校・病院を含む公共施設が甚大な被害を被っています。
ほとんど天敵のいない霊長類の長たる人間にとって数少ない強力な天敵は、人間自らとウィルスや細菌などの病原体であり、この二つの極めて恐ろしい天敵との歴史上幾度も繰り返された痛ましい戦いを今まさに二つ同時に目の当たりにしています。これらに対し国際社会は協調して対処しなければなりませんが、中華人民共和国やロシアに代表される多くの専制独裁国家と国際社会を牽引している少数の自由民主主義国家の対立が激化しているのが現実です。
特に東アジアにおいて我が国は核を保有する専制独裁国家である中華人民共和国・ロシア・北朝鮮と一衣帯水の間で国境を接しています。このような状況の中わが国の防衛にとって最も重要な事はウクライナ国民と同様に日本国民の自らの国は自ら守るという強い意志、必要な防衛力の整備、そして同盟国等との強い連帯が必要ではないでしょうか。

 このような中、日本郷友連盟にとって活動を維持・存続するためには、会勢の拡大、財務基盤の改善等は喫緊の課題であり避けて通る訳にはまいりません。私共は初心を忘れず、一致団結して「誇りある日本再生」のため、より一層の努力精進を重ねる所存であります。皆様の温かいご協力とご指導をお願いする次第であります。
 終わりに、会員皆様並びにご臨席賜りました皆様の益々のご健勝とご活躍をご期待申し上げ式辞といたします。

                  


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